石山 未紗

ドクターインタビュー

石山 未紗

診療科について

小児歯科ではどういった診療を行っていますか

小児歯科では、おもに乳歯が生えてくる頃から永久歯の歯並びが完成するまでのお子さんを対象として虫歯の治療や予防、歯並びやかみ合わせの治療、歯のけがの治療、過剰歯や歯のすじ(小帯)の切除などの外科処置などを行っています。
患者さんの中には歯科治療に対して恐怖心が強いお子さんや、障がいをもっている方もいらっしゃるので、そのような場合には保護者の方と相談して全身麻酔や静脈内鎮静を使用した集中治療を行うこともあります。小児歯科での全身麻酔は主に日帰りで行っています。全身状態や処置内容によって適応かどうかが判断されるので興味があれば担当医にご相談いただければと思います。もちろん、泣いて暴れて近医で治療困難であっても通常下で治療を希望される場合はそのように対応しますので、どのような方法で治療を進めていくか担当医とよく相談していただければと思います。

咬合誘導とはどういったものですか

咬合誘導とは、「咬合育成」とも言われますが、正常な成長発育を促すために歯・歯列・顎骨・筋の調和を保つように導いていく処置になります。例えば、虫歯などで早期に乳歯がなくなった場合、そのままにすると歯がない部分のすきまに隣の歯が倒れてきたりして歯列の形が崩れる可能性があります。そのような場合は装置を使って形態保持をはかる処置を行います。また、歯・歯列・顎骨・咬合・筋の発育過程に異常が認められる場合、あるいは予見される場合、これらの成長段階に応じて積極的に働きかけを行っていきます。例えば、顎が狭く永久歯が並ばないと予想される場合には顎を広げる装置を用いることもあります。


長引くマスク生活で口呼吸の子ども達も増えています。口呼吸になると口周りの筋肉が衰えていわゆるぽかん口になり、唾液の量が減少したり虫歯や歯肉炎になりやすくなります。また、舌の位置が正しいポジションにないと開咬(上の歯と下の歯に隙間がある状態)や反対咬合(上の歯と下の歯が逆に位置している)などのかみ合わせに影響を及ぼすこともあります。そのような場合、口周りの筋肉や舌などを正常な状態に整えるようなトレーニングをしたり装置を用いることもあります。

診療について

先生の歯科医師としてのモットーや心がけていることを教えてください

私にも小児歯科の外来に来院される患者さんと同じくらいの年齢の子どもがいるので、もしも自分の子供だったらどうするかなと考えながら治療方針を決めるようにしています。子どもができて教科書的な理想と現実のギャップに悩まれる親御さんは多いと思いますが、私もその一人です。毎食後歯ブラシで磨いてフロスをすること、それはとても理想ですが、現実にはなかなか難しいですよね。仕上げ磨きは大切ですが無理のない範囲でやってもらえるのが良いと思います。虫歯ができてショックを受けている保護者の方には乳歯は永久歯とは別物なので、乳歯は永久歯の練習だと思って永久歯に生え変わったときに虫歯ができないように少しずつ頑張りましょうとお話ししています。


また、小児歯科では外傷で来院される患者さんも多いですが、保護者の方にとって突然自分の子どもの歯が折れたり、なくなったり口の中の粘膜が傷ついて血だらけになってショックが大きいと思います。そういう時は患者さんに寄り添いながら、気持ちを切り替えて次に進めるようにサポートできるように心がけています。

経緯について

この専門分野を志したきっかけを教えてください

研修医の時に、成人の虫歯の患者さんを診ているうちに、上手に予防していれば虫歯にならないのにと予防の大切さを実感しました。歯は一度削ると戻ることはありません。虫歯を削っていくうちに歯は脆弱になり、最終的に歯を喪失し入れ歯やインプラントになっていきます。そうならない為には予防はとても重要になってきます。予防をするなら早いうちに歯ブラシを習慣づけることが大切だと考えて小児歯科を選びました。小さい時から歯ブラシ・フロスの習慣が身に付けば大人になっても続けられると思います。また、歯科医院に定期的に通ってチェックしていく習慣も大切なことだと思います。昔は泣いて暴れて通院していた患者さんが、成長して大学生になってカリエスゼロで、当たり前のように歯ブラシやフロスの習慣が身についているのをみると、小児歯科医をやっていて良かったなと思います。

まとめ

この病院の好きなところを教えてください

大学病院というと堅いイメージがあると思いますがアットホームな雰囲気が良いところだと思います。また、色々な専門の科がありますが、みんな話しやすい雰囲気があるので、1つの症例に関して他の専門の先生の意見を聞いて相談しながら診療方針を決めていくことができるので、患者さんにとってよりベストな治療法を提供できることができます。私自身も色々な専門の科の先生とお話しできる機会が多いので日々多くのことを学び、新しい情報を得ることができています。小児歯科は特に診療室の壁紙も可愛くて明るい雰囲気も好きなところです。また、子どもを連れて仕事に行くこともあるのですが、みんな温かく見守ってくれたり、遊んでくれてたり、育児との両立を支えてくださり、とても働きやすい環境であるところもこの病院の良いところだと思います。

患者さんへのメッセージをお願いします

小児歯科は患者さん(お子さん)と保護者の方と歯科医師の3人の信頼関係があってこそ、最善の医療が提供できると思います。そのため、虫歯治療などで来院する時に、お子さんに「今日は何もしないから。」とうそをついて連れてくるのはお薦めしません。そのうそがお子さんとの信頼関係を損なう可能性があります。わからないことや、不安なことがあればすぐに相談してもらえればと思います。電車や車で通院する患者さんが多く、特にお子さんを連れての通院は大変だと思いますが、大切なお子さんのためにできる最善のことは何かをともに考えてそのお手伝いができればと思っています。

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