伊藤 智加

ドクターインタビュー

伊藤 智加

診療科について

総義歯補綴科ではどういった診療を行っていますか

「補綴」というのは身体の一部が何らかの原因により失われてしまった場合、その形態や機能を人工の装置によって補うことです。失ったものが眼であれば義眼、手や足であれば義足・義手となり、歯であれば義歯となります。総義歯補綴科では冠や部分入れ歯の治療も行いますが、いわゆる「総入れ歯」を特別に得意としています。「総入れ歯」と言っても一概に歯が1本も無いと言うわけではなく、磁石を利用した入れ歯やインプラントを応用した総入れ歯の治療も行っています。「補綴」は形態や機能の回復はもちろんですが、今は審美性についての回復も必須事項となっています。義歯を装着する患者様すべてが満足いただけることが大切です。健康で楽しく、元気でいられることが重要です。

また、現在の日本は75歳以上の高齢者が総人口の15%を占める超高齢者社会となっています。そんな中、当科においては「お口の健康が損なわれると全身に影響を及ぼす」という概念から、口腔内の健康管理を目的として口腔機能低下症の検査を行っています。口に関する些細な衰えを放置せず、「健康寿命の延伸」の一端を担い、多くの方々が元気で楽しく長生きをすることに貢献したいと考えています。

さらに「顎が痛い」「口が開かない」「頭痛や肩こりがひどい」などを症状とした現代人の病気ともいわれる顎関節症や、近年マスコミなどでも頻繁に取り上げられている「睡眠時無呼吸症候群」の治療なども行っています。

患者様それぞれが持つ苦痛が改善され、健康で楽しく自立した生活が送れるよう手助けをさせていただくことが我々の仕事です。

磁石を使った義歯とは?

磁石の金属に吸着する力を利用した入れ歯です。残っている歯の根を利用して、そこに土台として磁石に吸着しやすい金属を埋め込みます。そして磁石を入れ歯の中に埋め込みます。それによって入れ歯を入れると、歯に入っている金属と入れ歯の中に固定された磁石が吸着して、磁石の力によって入れ歯が安定する仕組みになっています。一方、注意しなくてはならないことは、総入れ歯と言っても中には歯が残っているため、その歯をシッカリ磨かなくてはなりません。また、MRIの撮影時には歯の周りの像が乱れることがありますので、注意が必要です。

さらに最近は磁石を使った入れ歯も、全てではありませんが保険診療が適用されるものもあり、より身近になってきています。

診療について

先生の歯科医師としてのモットーや心がけていることを教えてください

患者様に新しい入れ歯を入れることは、特別な事情がない限りはさほど大変なことではありません。しかし当院を来院される理由によっては、原因を究明してから新しい入れ歯を作らなくてはならないことが大多数です。そんな中、私が拝見する多くの患者様は、かみ合わせに問題があり、その結果入れ歯が合わなく痛みが出てしまう方が多くいらっしゃいます。そのようなときにはまず、かみ合わせの治療を先に行い、それが改善された時点で新しい義歯を作り始めます。たとえば顎の関節が痛くなる顎関節症ですが、この病気は歯のある方だけの症状と思われがちですが、歯のない方にも発症します。そのような時には顎の痛みを治しながら義歯を作っていくことも行っています。

また、総入れ歯は「歯が1本も無い!」と思われがちですが、歯の根だけを残して、磁石を利用した動かなく、そして使いやすい入れ歯の治療も行っており、患者様にとても喜んでいただいています。

さらに私は、使っていただく入れ歯は、患者様の意見を取り入れながら専門知識および最新の技術を最大限に活かして共に作り上げていくものと考えています。入れ歯を入れた方が、入れていることが苦とならず、楽しく食事や会話をし、毎日が有意義な社会生活を送ることができるよう心がけています。

経緯について

先生が歯科医師を志したきっかけを教えてください

 私は父が歯科医師であり、幼少の頃より父に連れだって大学の研究室に出入りし、常に私の周りには「歯科」の存在がありました。そんなこともあり、大学も父と同じ日本大学歯学部に入学し現在に至っています。

大学卒業時に専門を決める際には、歯の神経の治療を専攻しようかまたは現在の冠を入れたり義歯を作ったりすることを専攻するかをとても悩みました。神経の治療の良否によりその後の治療成果が確実に決定するため、とても魅力的な学問でした。しかし私の性格に加え、咬み合わせや審美性の回復にとても興味があったこと、さらには物を作るために手を動かすことが好きなことも乗じ、現在の分野の方が自分には合っているのではないかと考え専攻しました。

物を咬む際に使う顔の筋や関節の動きを考え咬み合わせに反映させたり、義歯に使う人工の歯を選んだり、並べ方を工夫したりし、さらには審美性を回復することを今でも思考錯誤しながら日々奮闘しています。患者様には若い時の写真をご持参頂いて参考にしたり、普段の生活の事情をお尋ねしたりして、それぞれの患者様に適した義歯の製作を心がけています。時間はかかりますが、患者様と色々なお話しをさせていただきながら完成させていきます。新しい義歯を患者様に入れていただいた時の笑顔が、私にとっての最大のご褒美になります。そしてそのために、さらに邁進していくことを自身に課しています。

まとめ

この病院の好きなところを教えてください

新病院が完成し清潔感のある明るい院内に加え、近年の感染症に対する対策も構築されています。さらに診療室は開放感の中にも患者様のプライバシーを十分配慮できるパーテーション形式をとっており、安心して治療を受けていただけるシステムが整っています。

患者様の一人ひとりに合ったベストの歯科医療を提供することを目的に、診療医や衛生士だけではなく病院のスタッフが一丸となり、あらゆる面で患者様をサポートすることができるチーム医療を心がけております。それが当院の魅力です。

患者さんへのメッセージをお願いします

本院は歯科の総合病院です。それぞれの診療科において治療のエキスパートがそろっています。専門家による高水準の治療を受けることができるため、患者様の満足が得られることと信じています。また、すべての診療医が日々進歩する治療をご提供できるよう研鑽を重ねております。すべての歯科医師が不撓不屈の精神で治療にあたっているため、時には長時間の診療を強いられますが、ベストを尽くしているが故と信じ治療にあたられてください。その結果、患者様が健やかな日常生活を取り戻していただくことができると思います。

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