篠塚 啓二

ドクターインタビュー

篠塚 啓二

診療科について

外科矯正治療はどういった病気を対象にしていますか。「顎変形症という病気について教えてください

顎変形症は上下の顎(あご)の形や大きさ、位置の異常やバランスの異常が原因で、顔の変形や咬み合わせの異常(咬合不正)を起こしている状態をいいます。日本人に多いのは下顎前突症(かがくぜんとつしょう)といって、上顎に対して下顎が大きくなると、顔つきは下顎が突き出た状態となり噛み合わせは受け口になります。このように骨格的な異常を外科的に直すのが、外科矯正治療(顎矯正手術)といった治療になります。

手術はとても怖いのですが

そうですよね。よく分かります。確かにこの手術は高い技術と経験が必要とされていますが、私が所属している口腔外科では顎変形症に関連する手術を年間200例以上行っています。矯正科と連携の上、丁寧な診査診断、治療を心がけております。沢山の経験から、患者さんは機能と審美の改善への期待がある一方で、手術に対する不安があることは重々承知しております。寄り添いながら、少しでも不安を取り除き、信頼されるように努めております。

診療について

大学卒業後は、どのようなご経験を積まれたのでしょうか

大学卒業後は千葉大学医学部附属病院で2年間の初期研修を行いました。この間、特に、多くの口腔がん患者の診療に従事していたことから、口腔がんの症状、またその治療が患者さんにもたらす多くの苦痛と負担を実感し、診断と治療方針の立案の重要性を強く感じました。このため、大学院進学を決意しました。大学院時代には、「口腔癌の遺伝子学的解析と臨床応用」をテーマに臨床に密接した分子生物学的な研究を行ってきました。この研究は現在も続けており、患者の早期診断や治療効果、転帰を予測し、個々の患者に適切な治療を選択することができる、テーラーメイド治療の開発を目指して日々研究を行っております。大学院卒業後は、所属していた当時講師だった先生が筑波大学に教授として、栄転したことがきっかけとなり、筑波大学で3年間勤務しました。その際に、国の事業での「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」に採択され半年間の海外留学を経験したことで、世界最大規模のがんセンターで大規模試験での研究がしたい想いが高まり、引き続き2年間、米国テキサス州、ヒューストンにあるテキサス州立大学MD Anderson Cancer Centerへ留学しました。帰国後は、帝京大学に勤務し、口腔がんや骨折、顎変形症診療など多岐にわたり診療を行いました。その後、2016年4月から日本大学歯学部に勤務し、学生教育と研究に携わりながら、今まで専門としてきた口腔がん治療から、歯学部の特性をより生かせる顎変形症の手術を中心とした診療を行っております。

まとめ

先生のこれからの目標や夢について教えてください

私は医学部附属病院の口腔外科で勤務した際に、口腔外科的な治療だけでなく、一般歯科治療や顎の骨を大きくとった後の顎補綴といった入れ歯の治療も行っていました。一方、日本大学歯学部付属歯科病院は、各専門診療科が充実しているため、口腔外科の治療に専念できると共に、患者さんにより良い治療を提供することが出来ることが、嬉しく思います。また、当院の歯科医師のほとんどが、日本大学歯学部出身であり、同期はもとより、先輩後輩の絆が強くあることです。そのため、複数の専門的な診療を行う際にも、お互いに信頼感をもって、かつ良好な連携が行えることです。

先生が現在興味をお持ちになっていることや、今後のご展望について教えてください

私の現在の師匠である外木守雄先生は、口腔外科の役割のひとつに、”咬合の外科学“があり「不正咬合は外科的手法をもって治す」ことを使命とすることを教えてくださいました。また、顎変形症の手術を行う際に、下顎が前にでているからといって、安易に下顎を後方移動させると気道の狭窄を生じ、閉塞性睡眠時無呼吸症につながることが危惧されています。このようなことから、呼吸、生理学的な機能も考慮した手術を行う必要があります。
現在、歯科の世界的トピックが気道であり、注目されています。今後も、顎骨を移動する治療を行う場合に起こる、気道の形態学的、生理学的な機能に関する静的・動的評価の解析を行い、より精度の高い医療を提供できるように努めてまいります。
私自身としては、今後はさらに後輩を育てていくことにも注力していけたらいいなと思っています。認定資格の取得をはじめ、確かな技術の向上、そして、教育・研究の指導者の育成を目指していきたいです。同時に歯科医師として、どんなに技術が高くとも、円滑なコミュニケーションが取れなければ周囲の人も患者さんもついてきてくれないと思います。そのため、人間性やコミュニケーション能力も大切に育成していきたいです。

患者さんへのメッセージをお願いします

医療の中でも特に口腔外科分野は1人で行えるものではなく、構築された仕組みのもとで多くの医療従事者が協力し合って行うものです。その点で、当講座ではこれまでの豊富な症例実績や経験豊富な医局員、看護師を有していることから、円滑な治療が行える環境にあるのが強みです。このような最適な環境のもとで治療を行うことで合併症の発症率などがおさえられ、安全な治療を行えます。ぜひ安心してご相談ください。

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